2024.02.20
プレスリリース 地域資源マネジメント研究科

コウノトリ野生復帰個体群の生存率に関わる要因を解明

兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科?兵庫県立コウノトリの郷公園の出口智広准教授と元教授の大迫義人博士、人間環境大学環境科学部の岡久雄二助教の研究グループは、国内で野生復帰したコウノトリの生存率を決める要因を明らかにしました。

野生復帰とは、野外の母集団から個体を人為環境下に移し、飼育増殖を経て、かつての生息地に戻す保全手法です。しかしながら、母集団から得られる個体は大抵少ないため、グループ構成には偏りが生じ、加えて、飼育下では自然条件とは異なる選択がかかるため、野外環境に戻した個体がうまく順応するとは限りません。そのため、野外での生存率や繁殖率と、これらに基づく個体群動態をモニターし、その結果を飼育増殖やリリースの技術にフィードバックする順応的管理が、野生復帰の長期的成功の鍵となります。

そこで 、他の特徴に比べて、変異が比較的維持されやすいミトコンドリアDNAのタイプ(ハプロタイプ)を特に注目して、コウノトリ野生復帰個体群の生存率や繁殖率を調べてみました。その結果、繁殖率に顕著な違いは見られませんでしたが、生存率は特定のハプロタイプのみ低いことが分かりました。

現在、コウノトリの野生復帰個体群は、このハプロタイプが現在多数派を占めており、なんとも不思議な状況です。これは、野外に戻す個体が、これまで家系の多様性に基づいて選ばれており、ハプロタイプには注目してこなかったことが理由に挙げられます。今後、野外のコウノトリの加速的な回復を望む状況が生じた場合、このような遺伝形質による適応度の違いにも目を向けて、野外に戻す個体を選ぶ必要があるでしょう。

本研究の成果は英国オックスフォード大学出版局が発行する国際誌『Ornithological Applications』において2024年1月30日に早期公開されました。

研究詳細

別添のとおり

論文情報

論文タイトル

Reintroduced Oriental Stork survival differed by mitochondrial DNA haplotype
(コウノトリ野生復帰個体群の生存率はミトコンドリアDNAのハプロタイプによって異なる)

著者名

兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科 出口智広准 教授
人間環境大学環境科学部 岡久雄二助教
兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科 大迫義人(元) 教授

雑誌?号? doi

Ornithological Applications
DOI:https://doi.org/10.1093/ornithapp/duae005

問い合わせ先

出口智広(でぐちともひろ)
兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科
TEL:0796-34-6079
E-mail:deguchi@rrm.u hyogo.ac.jp

同時資料提供先

兵庫県立コウノトリの郷公園
〒668-0814 豊岡市祥雲寺128
TEL:0796-23-5666

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