Mystery of the Earth

#化石 #進化 #地磁気 #地殻変動 #火山 #岩石 #防災

私たちの足元に広がる大地。そこには、遥か昔から続く地球の営みや生命の歴史が刻まれ、地球の変化や生物の進化など、多くの謎を解き明かす鍵が隠されています。大地に秘められた壮大な物語に迫る、兵庫県立大学の研究をご紹介します。

化石が語る生命の歴史
—小さな骨から読み解く進化の物語

池田 忠広教授

自然?環境科学研究所所属(研究者情報はこちら

私は、ヘビやカエル、トカゲなど両生類?爬虫類の化石を対象に研究しています。化石と聞くと恐竜を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、生物の進化や過去の生物相、当時の生態系を明らかにするには、多様な生物の化石を幅広く調べる必要があります。現生種の形態や分類の知見をもとに、化石がどのような生物に由来するのか、どのように進化してきたのかを探っています。

私の研究は、琉球列島の島々で発見されたヘビの化石から始まりました。約150万年前や2万年前の地層から見つかった脊椎骨の化石を、同地域に生息する現生種と比較し、過去にどのようなヘビがいたのかを明らかにしています。その後、研究対象は白亜紀の地層(約1億1000万年前、篠山層群大山下層)から産出したカエルやトカゲの化石にも広がりました。これらは恐竜と同じ時代に存在していたもので、当時の生物相や進化の過程を探る上で貴重な資料です。

化石研究は発掘だけでなく、発見後のクリーニングや詳細な観察、世界中の化石との比較によって進められます。そうして初めて、化石の正体が明らかになります。成果は論文にまとめ、新たな知見として発信され、進化の歴史解明に寄与します。過去を知ることは、現在の生物多様性や未来の環境を考える手がかりにもなるのです。

私は研究と並行して、教育?普及活動にも力を入れています。子どもたちに向けて発掘体験や講座を実施し、科学や地域の自然への興味を育む機会を提供しています。これらの活動は地域の協力があってこそ成り立つものであり、今後も連携を深めながら進めていきます。

子どもの頃、テレビの科学番組に感動し、「未知の世界を知ること」に魅了されました。その想いは今も変わらず、誰も見たことのない過去を解き明かすことが、私の研究の原動力です。

拡大する研究

地球の歴史を読み解く、古地磁気学の世界

宇野 康司教授

環境人間学部所属(研究者情報はこちら

専門は古地磁気学。岩石には形成当時の地磁気が刻まれており、その記録を解析することで、地球の過去の姿を明らかにできます。例えば、日本列島は2000万年前にはアジア大陸とつながっていましたが、日本海の誕生とともに現在の形へと変化したと言われています。その証拠の一つとなるのが、岩石に残る磁場の向き。岩石の磁場の向きを磁力計で測定し、データを集めることで、大陸の移動や地殻変動の歴史を見ることができます。また、火山の噴火や火砕流の温度も調べることが可能。岩石が定置した時の温度を磁気から推定し、過去の火山活動の規模を知ることで防災にも応用できます。さらに、長期間安定した地盤の特定にも役立つ可能性があり、原発やインフラ整備の安全性評価にも貢献できるかもしれません。今後は、日本列島の形成史をより詳しく解明し、応用研究にも積極的に取り組んでいきたいです。


火山岩に刻まれたマグマからのメッセージを解読する

佐野 恭平講師

地域資源マネジメント研究科所属(研究者情報はこちら

私は火山の噴火メカニズムを研究しています。火山の噴火と聞くと、火山が爆発している様子を思い浮かべる人がいるかもしれませんし、ドロドロとした溶岩が地上を流れる様子を思い浮かべるかもしれません。このように、火山の噴火には実は多様性があります。噴火の際に放出された火山岩はこのような噴火の多様性を生み出すメカニズムを解明する鍵になります。例えば、火山噴出物の一つである軽石の気泡の大きさや単位体積あたりの数といった岩石組織を顕微鏡で調べることで、マグマがどのようにして地下から地上に上がってきたのかを明らかにすることができます。また、火山岩に含まれる結晶を詳しく調べることでも、地下のマグマの状態や噴火までのマグマの変化、上昇過程を読み解くことができます。こういった研究は、過去の火山活動を知るだけでなく、未来の噴火予測につながる可能性もあります。日本は火山大国であり、火山の恩恵を受けている一方で、噴火のリスクと向き合うことも重要です。私の研究が、噴火予測の新たな手法の提案や精度向上や防災対策に貢献できることを願いながら、これからもフィールド調査や実験に取り組んでいきます。

注目の人 -Person-

大地の磁場の向きから、地殻の安定性を分析

日本列島西部における約1億年間の地殻変動の歴史を研究中。古地磁気学の手法を用いて吉備高原の地層の磁化情報を分析し、西南日本の古地磁気極移動曲線を確立しました。その結果、吉備高原が約11000万年前から4000万年間安定していたことがわかりました。地震や火山活動が多い日本において安定した地域の特定は重要。今後は、他地域のデータと比較し、日本列島での長期的な地殻安定性のメカニズムを解明することで、防災?減災に貢献できる研究を目指します。

大地の磁場の向きから、地殻の安定性を分析

菅 遥輝 さん

環境人間学部 4年

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